暮らし方や家族構成で、生活スタイルが変わります。
親と子供が同居する二世帯住宅でお互いストレスにならないように、又、子供が増えたり成長して子供部屋を増設したいなど、暮らしによって住まいの姿は変化します。
増改築の基礎知識
まず始めに、増築・改築って?
「増築」とは、文字通り「住まいの床面積を増やすこと」です。骨組や構造から作り直す場合もありますし、敷地内に新しい構造物をつくったり、平屋を2階建てにするなど、さまざまなケースがあります。 「改築」とは、建築基準法に「建築物の一部を除却又は、建築物が災害によって一部焼失した後、引き続いてこれらと用途・規模・構造の著しく異ならない建築物を立てる工事」と書いています。一般的には、床面積を変えずに間取りの変更をともなう工事をすることをいいます。
※「改装」や「模様替え」は間取りの変更をともなわず、内外装を改めることをいいます。また、修繕は設備機器や雨漏りなどを修理することを指します。
建ぺい率や容積率って何?
自分の家とはいえ、希望通りに増築・改築できないことがあります。法律的には建築基準法や都市計画法などの規制を受けるので、プランを立てる前に確認しておく必要があります。たとえば、増築では敷地全面に建物を建て増しできるわけではありません。敷地ごとの「建ぺい率(※1)」で建てられる面積が制限されています。1階を増築する場合、50平方メートルの敷地で建ぺい率70%なら建築面積は35平方メートルが限度になります。また、増築後の総床面積が「容積率(※2)」の範囲内に納めなければなりません。その他には、第一種・第二種低層住居専用地域の「高さ制限(※4)」や、北側の土地が日影にならないようにする「北側斜線制限(※3)」、町並みに圧迫感を与えないように配慮する「道路斜線制限(※5)」などの規制があります。風致地区では、建物の高さや外観の色彩の基準が制限されています。
- ※1建ぺい率…敷地面積に対する建築床面積のこと
- ※2容積率…敷地面積に対する建物の総床面積のこと
- ※3北側斜線制限…敷地の北側隣地に対する日影被害を少なくする規定。建物から北側隣地境界線まで真北方向への水平距離に対して高さ制限が設けられています。
- ※4高さ制限…第一種・第二種低層住居専用地域では、建物の高さを10mまたは12m以下と定めています。
- ※5道路斜線制限…前面道路の幅員に1.25または1.5をかけた数字で得られる斜線の範囲内に建物を納めなければなりません。
増築・改築の「できること」「できないこと」
間取り変更は工法によって自由度が違います。
増築や、間取り変更をともなう改築は、建物の構造・工法によって「できること」「できないこと」が変わります。
在来工法(木造軸組住宅)
間取り変更が容易。建物を支える柱や、耐力壁と呼ばれる筋交いは動かせませんが、間仕切りになる壁は自由に移動できます。
プレハブ
鉄骨系の場合は間取り変更容易。木質系、コンクリート系は壁で支えているため自由に移動できません。
2×4工法
建物を支える間仕切りは動かせないので、間取り変更には制限があります。
鉄骨造
重量鉄骨は間取り変更容易。軽量鉄骨は耐力壁の移動に制限あり。
鉄筋コンクリート造
柱が梁と剛接合したラーメン構造の場合は間取り変更容易。壁式構造の場合は制限あり。
さまざまな増築法
ひとくちに増築といっても、さまざまな方法があります。
差しかけ増築
1階に部屋を増やしたい場合に用います。既存の住まいの横に差しかけて増築する方法です。既存の住まいの解体は、増築部分と接する所のみなので費用は低く抑えられます。
2階まで差しかけ増築
天井を高くしたい場合や、2階まで増築したい場合は、既存の屋根を一部解体してつなぎ増築します。
取り壊し増築
1階と2階を増築する場合などに用います。建物の屋根と壁を解体して増築する方法です。解体部分が増え、場合によっては補強などが必要になるので費用がかさみます。
おかぐら増築
平屋に2階部分を増築する方法です。既存の1階部分の屋根を撤去して増築しますが、その際に柱や梁の補強が必要です。ちなみに2階建てから3階建てへの増築は難しいといわれています。
増築・改築のプランニングの基本
住まいの動線やゾーニングを考える
間取り変更をともなう増築・改築では、住まい全体の動線やゾーンをよく考えてプランニングしましょう。住まいのなかで人が移動する経路を「動線」といいます。また、住まいのなかの似たような機能をもつ空間をグループに分け、同じグループをできるだけ近くに配置する考え方を「ゾーニング」といいます。
ゾーニングを例に考えると、住まいは大まかに「パブリックゾーン」と「プライベートゾーン」に分けることができます。玄関や廊下、応接間はパブリックゾーンで、寝室、子ども部屋、書斎はプライベートゾーンです。リビングやダイニング、キッチン、浴室、洗面は中間ゾーンと考えてよいでしょう。3つのゾーンが住まいのなかで三角形になるように配置すれば、プライベートとパブリックはお互いに干渉されることがなく、どちらのゾーンからも中間ゾーンが近くなり便利な住まいが実現します。
またプランニングでは、日当たりや通風、プライバシー確保、ご近所の日当たり・風通し、既存建物との調和なども合わせて考えておきましょう。
ライフスタイルを考える
最近ではライフスタイルや部屋の使い方が変化し、ゾーンに分けられない部屋も出てきました。たとえば、キッチンは中間ゾーンに分けられていましたが、来客が多いお宅ではパブリックゾーンとしてリビングに組み込まれるようになっています。子ども部屋もリビングから離れたところよりも、リビングの近くに作るご家庭が増えています。 このように、自分たちのライフスタイルを考えて部屋の配置を決める方が、住みやすいプランニングができるかもしれません。
構造面も考える
増築では構造面も合わせて検討したいところです。たとえば、壁や柱は外せるもの外せないものがあります。外せる場合も補強が必要ですので、よく相談してください。 2階の増築などでは、家のバランスがくずれることがあるので、2階の補強が必要になる場合があります。また、水まわりの増築は、配管の取替えなどで工事が増えて費用が増えやすいとも言われます。特に2階に水まわりを増設する場合は、費用が増えがちなので注意しましょう。
増築・改築の機会に耐震診断を
地震はいつ起こるか分かりません。増築・改築時には、ぜひ耐震診断をしておきたいものです。増築部分については現在の耐震基準で建てるので大丈夫ですが、既存部分は古い基準かもしれないので耐震診断のうえ、必要であれば筋交いや壁の補強をしておきましょう。特に昭和56年以前に建てられた住まいは、現行の耐震基準をクリアするように補強しておくことが大切です。
耐震診断は、最終的には専門家に依頼することになりますが、まずは簡易診断として、下記のホームページをチェックしてください。
増改築プランのヒント!
「ちょっと増築」で開放感あふれるリビングに
「子どもをのびのび遊ばせたい」「大勢のお客様をもてなしたい」「大画面テレビをゴロンと横になって観たい」など、多くの人が広いリビングにしたいと考えておられます。しかし、大規模な増築・改築は敷地の問題や確認申請が必要など、何かと大変です。そんな時、リビングを「ちょっと増築」するだけで、比較的簡単にリビングを広げることができます。
例えばリビングの庭側の壁を解体して2畳分広げ、窓を大きくとって採光を確保。これだけで随分広く感じるから不思議です。また、増築部分はサンルームや縁側にしても良いですね。サンルームは日向ぼっこができるほか、物干し場や、子どもの遊び場、ペットの居場所など、多目的に使えます。
庭にスペースの余裕があればウッドデッキを設置してもいいでしょう。自然と一体化したアウトドアリビングができあがります。サンルームやウッドデッキを作る場合は、リビングと床の高さを同じにしておくと内と外の一体感ができ、バリアフリーにもつながります。
1階の屋根部分をバルコニー・ベランダに
バルコニー・ベランダでくつろぎ空間
「差しかけ増築」といわれる1階のみの増築は比較的簡単にできますが、上のスペースがもったいないと感じる方もおられます。そんな方は、水平屋根の「陸屋根」にしてバルコニー・ベランダを設置してはいかがでしょう。増築した1階の上にバルコニー・ベランダを設置する場合、広い空間を確保できるため、第2のリビングとして活用できます。のんびりとした午後のティータイムや、夜空を眺めながら夫婦語らいの場所として、また夏はバーベキューなど、いつもとちょっと違う暮らしを楽しめます。
ちなみに、このように設置されたバルコニー・ベランダは建築面積に算入されない場合もあり、届け出が不要になることがあります。ただし、屋根付き駐車場の上にバルコニーを設置する場合は建築面積に算入されますので、いずれの場合も「わが家の場合はどうなのか」をリフォーム会社と相談してください。
屋上緑化やガーデニングを楽しむ
バルコニーを設置し、2階の窓を掃き出し窓にすることで、いままで暗く狭く感じた部屋が明るく広い空間に変わります。また、敷居をフラットにしておくと、室内外の一体感が出て広く感じるでしょう。さらに、バルコニーの床は、コンクリートそのままではなくタイルなどを敷くとオシャレ感がアップします。
バルコニーではガーデニングを楽しんだり、おもいきって屋上緑化にしてもいいかもしれません。屋根の上に土を薄く敷き、芝生などを植えれば、まるで公園にいるかのような爽快な気分が味わえます。屋上緑化は、省エネ効果として、夏は断熱、冬は保温効果があり、光熱費を削減することも可能です。芝生は地球温暖化の原因でもあるCO2を吸収し、都会の気温が異常に上昇するヒートアイランドの解消にも、ひと役買います。そして、なによりも緑とのふれあいで日々のストレス解消もできるでしょう。注意点としては、防水性や根対策、荷重制限をよく検討してプランニングすること。楽しい暮らしが実現しそうですね。
増築で子ども部屋を新設
リビングに子ども部屋を増築
お子さまが小学生高学年にもなれば、専用の部屋を欲しがるでしょう。一昔前まではリビングから離れた2階に個室を与えるのが一般的でしたが、最近では孤立させないよう、リビングの近くに子ども部屋を配置するご家庭も増えてきました。
また、1階のリビングの横に「差しかけ増築」で、子ども部屋をつくる方法もあります。リビングを通らなければ子ども部屋に行けないので、必然的に家族と顔を合わせる機会も増えるはずです。ただし、既存のリビングが暗くなる場合があるので、別の壁の窓を大きくするなど配慮が必要です。
2階に子ども部屋を作る場合も、ドアを設置しない開放型にしたり、リビングと子ども部屋が吹き抜けで一体となったプランにしたりするなど、お互いのコミュニケーションが取りやすい住まいにしたいものです。
勉強に集中できる子ども部屋って
受験期の子どもはちょうど思春期にあたり、ナーバスになりやすい時期でもあります。子どもが勉強に集中できるとともに、孤立しないような部屋づくりが大切です。
日当たりの良い南向きに子ども部屋をつくると、落ち着いて勉強ができないといわれます。朝日が入る東向きか、暗めで落ち着いた北向きの部屋を子ども部屋に当てるとよいそうです。北向きの2階は暗くなりがちですが、トップライトをつけることで採光を確保できます。また、部屋の広さは勉強机や本棚など、必要な物を置ければ十分とする考え方もあります。
子ども部屋を増築する際には、防音や室内温度などの環境面での配慮も大切です。壁・床材を防音効果の高いものを取り入れたり、『頭寒足熱』で集中しやすい環境を作るために床暖房を取り入れたりすることを検討してみてはいかがでしょう。ひとつの部屋を仕切って2部屋にする場合には、将来子どもが独立したときに取り払えるように、可能式の間仕切りを取り付けたり、造り付け収納などで仕切る方法もあります。
いずれにしても子ども部屋は、子どもの成長と共に求める条件が変わってきますので、どんな場合にも活用できるよう、フレキシブルな空間にしておきたいものです。
増築・改築で二世帯住宅をつくる
2階にも玄関をつくり、完全分離の二世帯同居に
いままで別々に暮らしていた親子が、ひとつ屋根の下に住む二世帯同居。住む人が増えるわけですから、できれば増築をしたいところです。
二世帯同居は住み方によって、「完全分離型」「ほどほど分離型」「完全同居型」の3つのタイプに分かれます。「完全分離型」は、玄関や水まわりなどを2つ設け、生活を別々にする方法です。1・2階をそれぞれ増築し、2階には子世帯、1階を親世帯のスペースとするケースが多いようです。その場合は、外階段から子世帯の2階玄関に上がれるようにしておきます。室内の階段は設けるケースと設けない場合があります。
「ほどほど分離」はキッチンやダイニングなどを別々に
「ほどほど分離型」は、玄関は1つで内部の行き来は可能なプランです。それぞれの来客が気兼ねなく訪問できるように、玄関のほかに勝手口を設けておくとよいでしょう。2階を子世帯、1階を親世帯とする場合は、キッチン、ダイニング、トイレはそれぞれに設けます。できれば浴室も分けたいところですが、無理なら子世帯側にシャワー室を設置します。お年寄りへの配慮として、階段の幅は広めにとり、踊り場をつけて廻り階段にするなど、安全性を考えた仕様にしておきましょう。
「完全同居型」は、寝室や納戸、トイレの増築ですむと思います。玄関やキッチンを別々にする必要はありませんが、子世帯の寝室の近くにサブキッチンやトイレを設けておくと便利です。
いずれの場合もプランニングで注意することは、深夜のテレビや排水音、階下への足音です。これらは親子といっても気になるもの。とくに家中を所狭しと走り回る、お孫さんがいる場合は配慮する必要があります。上の階のリビングから下の寝室を遠ざける間取りにし、床や壁に防音材を使うなどで解決しましょう。水まわりを2階にする場合は、1階の水まわりをすぐ上にしておきます。給排水管が同じ位置になるので工事費が安くなり、使用上のトラブルが少なくなります。
二世帯住宅はプランニング時に、お互いの希望を充分に話し合っておく必要があります。両方の言い分を聞き、親身になってプランニングしてくれるリフォーム会社を選ぶことが、成功する増改築のポイントです。